銀色の音色

好きになることにおびえていた
好きになることで傷つけた


 おれの心を狂わせる。オレは確信した。あの子こそ、おれの生涯の伴侶だ。そう思いながら、おれはプレゼントを差し出した。先輩に相談した通りに実行した。俺の計画に狂いはない。すべては完ぺきに事を運んでいた。


 彼女との出会いは光華女子高校吹奏楽部との合同練習の時である。先週より光華女子とおれの通っている白銀高校高校間交流を始めていた。今回の合同練習もその一環として始まった企画である。白銀高校は男子校であった。クールーでかっこいいおれを除いて、イモに等しい部員達は歓声をあげていた。
 パート練中、クールでかっこいいおれに、メス豚どもは声を掛けてこない。あたりまえだがな。気易く声をかけてもらいたくないということもない。しかし、全体合奏中、不覚にもおれは女神を見つけてしまった。今までかかわってきた女がすべて無に帰すような存在感であった。ずうっと興奮しっぱなしでピッコロのピッチがあわない。でも、そんなの関係ねぇ。彼女を見ていると、おれだけ違う音階を吹いていることなんて、Pが養豚場に出荷されるぐらいどうでもいいことに思えた。出会って1週間。早速プレゼントを渡すのにありつけたというわけである。


 高まるこの胸、この思い。天まで届け、おれの変・・・恋。俺は生まれて初めて積極的になれた。俺は女の扱いに慣れている。そう信じて、おそるおそる。"自分の生写真"を差し出した。


「・・・・・・。」


 空気が死んだ。沈黙の妖精が部屋中を駆け巡っている。照れているのだろう。世界に13枚しかないおれの写真だからな。
「・・・・・・あ・・・・・・ありがとう。」
 消え入りそうな声で彼女は呟いた。
 やった。いやった。いやったぞっ。彼女がおれの写真を受け取ってくれた。毎日おれのことを見てくれる。そして、おれはいつも彼女のそばにいられる。こんなうれしいことは生まれて初めてである。おれは歓びではちきれんばかりであった。