スマートフォンの「敷居」について

 ドコモからXperiaが発表されました。いわく、「端末やソフトの使い勝手のよさをユーザーにいかに知らせるか。とりわけ、上級者でない方に対してどのように裾野を広げていくか」というのをドコモは重視しているようです。
 で、日本でスマートフォンが流行らない弊害となりそうな敷居をまとめてみた。

  1. 通信料が高い。
  2. ガラケーじゃないとできないことが多い。
  3. スマートフォンを使う必然性が少ない。

まず、全ての基盤となるのが1の通信料の高さ。

 割と若い世代では「安い基本プラン+パケット通信定額」という料金体制にしている人が多いみたいです。このプランだとPC向けのサイトを見るのに追加料金が必要で、ばっちりPC向けのサイトを見ようとするとかなりの金額になります。一方スマートフォンでは特に追加料金を支払うことなくPC向けのサイトを見ることができますが、スマートフォン向けの定額プランは概ねガラケーの定額プランより1000円ぐらい割高です。willcomはちょっと特殊だからおいておく。
 スマートフォンの魅力のひとつに乗り換え案内などのソフトを特に情報料などを支払うことなく見れるというメリットはあるものの、通信料がかかるので結局意味がありません。また、月1000円を2年維持すると24000円余計にかかります。端末代がどんなに安くなってもこれだけのコストは確実に追加投資になります。これだけ高いと、わざわざスマートフォンを買う気も減退してしまうでしょう。

ガラケーじゃないとできないことが多い

 最近のコミュニケーションの主流である、「絵文字」や「赤外線でのデータ交換」などはで き ま せ ん。絵文字はやろうと思えばできるらしいが面倒らしい。デコメールとかはできません。人によって使うか使わないかに差はあれ、使う人にとっては重大な問題でしょう。
 「Xperia」の発表時にスマートフォンをもっと多くの人に手にとってもらおうというような旨が書かれていましたが、これではガラケーを使っている人へのアピールとしてはよろしくありません。まして追加投資が必要というハンデも背負っているのに、弱点まであると・・・ねぇ。
 あと、ガラケー向けのサービスがつかえなくなるのも人によっては困るでしょう。スマートフォンには確かに、ガラケー向けのサービスに頼らなくてもいろいろ面白いことはできますが、戸惑うことは間違いありません。日本では「同じキャリア、同じメーカーの端末を買い続ける」というコミットメント関係に頼る人が少なからずいるというのに、スマートフォンがこれでは敷居を上げている気がします。最も、使ってる人間にしちゃそんなもの必要ないんだけど。

PCインターネットとケータイインターネット

 スマートフォンはPCインターネットをするのには実に適しています。このPCインターネットをもっと使いたいという人なら、スマートフォンを手にとって見るのではないでしょうか。
 日本はおかしな国で、インターネットの普及要因である「GDPが高い」「既存の通信インフラのレベル」「国民の教育レベル」の条件が全て良いにもかかわらず、1999年にiモードが始まるまで、日本のインターネット普及率はiモードが始まるまで先進国としては異様に低かったそうです。日本でのインターネット普及阻害要因は以下のとおりと考えられています。

  1. 英語の壁(当時のコンテンツは英語ばっかり。)
  2. 電話料が高い(従量制)
  3. 文化的規範(手書きが偉い)
  4. タイプライター未経験(欧州ではキーボードにみんなもっとなれてた)

 これらの問題に対してiモードは一石を投じたので、普及したそうです。今のインターネット事情はどうでしょうか。少なくとも私が思うに日本語のコンテンツも増えたという観点から英語の壁は取り払われたのではないでしょうか。通信料も定額になりました。インターネットが普及する土壌は揃いましたし、実際インターネットは普及しました。
 では、どうしてスマートフォンは流行らないのでしょうか。iモードをはじめとするガラパゴスケータイのインフラは巨大なものになりました。今のケータイユーザーは知識階級を除くとガラケーに基準を置いているように感じます。これだけの敷居があるなか、追加投資をしてでも、スマートフォンを使う人は知識階層以外だと少ないと思います。
 hybrid W-ZERO3willcom以外で出たらもっと普及したんじゃないだろうか。あれが受けそうな層は今のウィルコムにはなかなか目を向けないだろうに。

スマートフォンじゃないとできないこと

 音声入力とか、PC向けのサイトを安く見ることとかありますが、どうにも決定的じゃない。日本のケータイ・インフラが強すぎて、イマイチスマートフォンの機能が魅力的にうつらないと思う。

これからどうなるだろうか。

 ドコモがどれだけソフトバンクよりAndroid端末を出せるかにもよるけど、十分な数のAndroid端末を出せれば「選択肢の数」でソフトバンクに対して優位に立てるでしょう。でも、Androidという共通のOSの下で各端末の個性をうまいこと出さないと、そのメリットはつぶれてしまいます。iPhoneAndroid両方使った人によると、AndroidそのもののiPhoneとの違いとしては「iPhoneではJailbreakしないとできないようなことも、Androidは標準装備しているなど、iPhoneはキャリアやメーカーがある程度道を引いてくれるが、Googleは自分で道を切り開ける人、いわばマニア向け」とコメントしています。コンピュータ慣れしている人にこのような魅力がどう伝わるか(これらの違いが周知の事実となるか)が気になるところ。各キャリアが2年縛りでユーザーを1つの端末に縛り付けることで、両方を知っている人は少なくなりそうだから。